予定帳が仕事や家事、誰かのための予定でびっしりと埋まっていることに、どこか安心感を覚えてしまうことはないでしょうか。
そんな効率を求めすぎる現代の暮らしの中で、いま注目されているのが、オランダの「ニクセン(Niksen)」というライフスタイルです。
ニクセンとは、直訳すると「何もしないこと」。
単なる手抜きやサボりではなく、あえて目的を持たずに、ただぼんやりと過ごす時間を積極的に作ろうという大切な知恵です。
いつも全力で走り続けてしまう大人の脳を、優しくクールダウンさせてくれる、引き算の休息を少し覗いてみませんか。
目的のない時間を、あえて手帳に書き込む
私たちは、時間が空くと無意識に「何か有意義なことをしなければ」と、スマホを覗いたり本を開いたりしてしまいがちです。
ニクセンのすすめは、その「何もしない時間」を、まるで大切な会議のようにスケジュールの中に最初から組み込んでしまうことです。
「15時からの30分間は、ニクセンの時間」と決める。
そこでは、生産的なことは何一つ行いません。
ただ窓の外を流れる雲を眺めたり、温かいお茶の湯気をじっと見つめたりするだけ。
その、誰にも邪魔されない余白の時間が、張り詰めていた心の糸を優しく緩めてくれるのではないでしょうか。
瞑想とも違う、完璧を求めない自由さ
「何もしない」と聞くと、マインドフルネスや瞑想のように、呼吸に集中したり雑念を払ったりしなければいけない、と感じる人もいるかもしれません。
けれど、ニクセンはもっと大らかで自由なものです。
頭の中でとりとめのない妄想が膨らんでもいいし、ただぼんやりと周囲の音に耳を傾けていてもいい。
「こうしなければならない」というルールを一切作らないことこそが、ニクセンの本当の心地よさです。
環境や自分の感情すらもコントロールしようと肩を回さない姿勢が、大人の脳を深い安心感で満たしてくれます。
罪悪感を手放したときに生まれる、心のゆとり
私たちは、何もしない時間に対して、どこか「時間を無駄にしている」という焦りを感じてしまうことがあります。
けれど、ニクセンが教えてくれるのは、その無駄な時間こそが愛おしい、という感覚です。
何かの役に立つわけでも、誰かに褒められるわけでもない、ただ過ぎていくだけの時間。
その意味を持たない時間を、ただ「心地いいな」と受け入れてみる。
「何かを成し遂げている自分」から一度離れて、ただそこに佇んでいるだけの自分を許してあげる。
その、良い意味での「あきらめ」のような静けさが、大人の心をそっと緩めてくれるのではないでしょうか。
暮らしのなかに、静かな余白を溶け込ませる
オランダの風が教えてくれるニクセンの知恵は、私たちが本来持っている大らかな生体リズムを取り戻すヒントでもあります。
大切なのは、一日の終わりに「今日もよく頑張ったね」と、すべてのタスクを一度横に置いてあげること。
時計の針を気にするのをやめて、ただ日が沈んだから横になる、という素朴な心地よさ。
自分の部屋の静けさに、今日を終えた身体がじわじわと馴染んでいく安堵感。
その優しい気配にただ包まれていると、慌ただしい現代のノイズから遠く離れた、懐かしくて深い眠りの底へと自然に引き込まれていくはずです。