地球から遥か彼方、宇宙ステーションで暮らす宇宙飛行士たち。
彼らにとって、質の高い睡眠をとることは、過酷なミッションを安全にこなすための最優先事項です。
しかし、上下の感覚もなく、寝返りさえ打てない無重力の世界では、眠るだけでも特別な工夫が必要になります。
私たちが当たり前のように受け取っている「重力」のありがたみと、それを補うための最先端の知恵を少し覗いてみませんか。
壁に固定された「寝袋」がベッドの代わり
宇宙ステーションには、地球のようなふかふかのマットレスやベッドはありません。
宇宙飛行士たちは、個室の壁に備え付けられた特別な「寝袋」に入って眠ります。
もし固定されていないと、眠っている間にふわふわと浮き上がり、部屋のあちこちや精密機械に身体をぶつけてしまうからです。
壁にしっかりと体をホールドさせること。
それが、宇宙での安全な眠りを作るための、第一歩になります。
「包まれる感覚」を人工的に作り出す工夫
人間は、どこかに身体が触れていないと、脳が「守られている」と安心できない生き物です。
無重力では布団の重みを感じられないため、そのままでは宙に浮いて落ち着きません。
そこで、宇宙の寝袋には、身体を適度な圧力で固定するストラップが付いています。
あえて身体を優しく締め付けることで、地球の布団に包まれているような錯覚を脳に与える。
この人工的なホールド感が、宇宙飛行士たちに深い安心感をもたらしてくれます。
1日に16回訪れる朝と、光のコントロール
宇宙ステーションは地球をものすごいスピードで周回しているため、90分ごとに昼と夜が入れ替わります。
つまり、24時間の間に太陽が16回も昇り沈みするのです。
これでは体内時計がバラバラになってしまうため、寝室の照明には特別なLEDが使われています。
就寝前には、夕暮れのような赤みを帯びた光に切り替え、脳に「夜が来た」と錯覚させる。
文明の利器を駆使して、体内リズムを強引に守る工夫がなされています。
重力から解放された、究極の脱力
不便なことも多い宇宙の睡眠ですが、メリットも一つだけあります。
それは、身体のどこにも圧力がかからないため、完全な脱力状態で眠れることです。
枕もいらず、首や腰への負担はゼロ。
一日の終わりに、背負い続けてきた肉体的な重みをすべて手放し、ただ空間に身を預ける。
私たちも忙しい毎日の終わりに、スマホを置いて目を閉じ、宇宙を漂うように身体の力を抜いてみませんか。
そのすべての緊張を解く時間が、明日を新しく生きるための確かな活力になってくれるはずです。