6月から7月にかけての梅雨の時期、朝起きるのがいつも以上に辛かったり、日中も強烈な睡魔に襲われたりすることはないでしょうか。
「自分の気持ちがたるんでいるせいだ」と無理に気合を入れようとしがちですが、実はこれ、日本の梅雨特有の気候が引き起こす、きわめて物理的な身体の防衛反応です。
雨が降り続く季節、私たちの内側ではどのような環境の変化が起きているのでしょうか。
今回は、梅雨の睡魔の裏に隠された面白いメカニズムを、少し紐解いてみませんか。
湿度90%の世界が、汗のセンサーを狂わせる
日本の梅雨の最大の特徴は、気温の高さよりも、空気中に満ちている圧倒的な「湿度」にあります。
雨の日の室内は湿度が80%から90%に達することもありますが、この高すぎる湿度が、私たちの皮膚にある体温調節のセンサーを狂わせてしまうのです。
人間は本来、皮膚から目に見えない微細な汗を蒸発させることで熱を逃がし、自律神経のバランスを活動モードへと整えています。
しかし、まわりの空気がすでに水分でパンパンになっている梅雨の日は、汗がうまく蒸発できず、身体の内側に熱と疲労がじわじわと籠もってしまいます。
この「熱を逃がせない重だるさ」こそが、脳に強制的な休息を促す強い眠気の正体です。
日照時間の激減が、目覚まし物質の分泌を止める
梅雨の時期に眠気がスッキリ抜けないもう一つの理由は、連日の曇り空によって「太陽の光」が圧倒的に不足することにあります。
人間の脳は、朝に強い光を網膜に受けることで、活動スイッチである「セロトニン」という物質を分泌し、体内時計を24時間にリセットするように設計されています。
ところが、分厚い雨雲に覆われた梅雨の朝は、晴れた日のわずか10分の1程度の光しか地上に届きません。
目覚まし時計の音が鳴って目が覚めたとしても、脳の奥にあるセンサーが「まだ夜が明けていない」と勘違いし続けているため、深い眠りの余韻がいつまでも引きずられてしまうのです。
気圧の谷がもたらす、細胞の微細な膨張力学
台風と同じように、梅雨前線が停滞しているエリアは常に気圧が低い状態(低気圧)が続いています。
空気の圧力が弱まることで、私たちの血管や細胞は、外側に向かってほんのわずかに膨張する性質を持っています。
このミクロのレベルでの膨張が、体内の血流を穏やかにスローダウンさせ、自律神経のスイッチを「リラックスモード(副交感神経)」へと引きずり下ろすのです。
生き物として「今はエネルギーを消耗せずに、じっと丸くなってサボっておきなさい」という、地球の気圧がくれる合理的なお休みサインだと言えます。
今夜は雨の重さに身体を馴染ませてみる
日本の梅雨という独特の季節のなかで、気候の流れに無理に抗って100%の効率を求めようとするのは、身体にとって大きな負担になります。
「だるくて動けない」と焦るのをやめて、今は高い湿度と低気圧によって、身体が丁寧に休息のメンテナンスを行っているのだとフラットに受け止めてみる。
灯りを落とした部屋で、ただ寝具に横たわり、窓の外の静かな雨の音に意識のピントを合わせていく時間。
梅雨の時期特有の重たい空気のなかで、張り詰めていた頭の中のギスギスした緊張はゆっくりと解けていきます。
地球の大きな水の循環の一部に自分の体温を委ねていくと、内側のめぐりは優しく整い、私たちは自然と、穏やかな休息の時間へと引き込まれていくのではないでしょうか。